【中世ヨーロッパ】布の鎧・革鎧からみる農民兵の装備と防御力を解説!

高峰 遼一
高峰 遼一
どうも高峰です!(@takamineryoiti
どうもアイリです!
アイリ
アイリ

 

記事からわかること

  • 中世ヨーロッパの兵士たちはどのような装備だった?
  • 布の鎧・革鎧の価値・性能・防御力とは?

Contents

中世ヨーロッパの農民兵の装備とは?

中世ヨーロッパと聞くと戦争が即座に思いつく。

そんな中世の戦争では、イメージとして貴族が自分の領土から連れてきた大勢の農民がいると思う。

では、そんな連れてこられた農民はどのような装備で戦争に赴いたのか?

 

その答えとして、中世ヨーロッパの農民兵がどのような装備で戦争へ赴いたかは正確にはわからないと言える。

その理由として、中世という時代は最大1000年と長く、ヨーロッパという地域も広く、環境や国家事情の違いから一概にはいえない。

 

しかし、強いていうのであれば、基本的に「木の盾」と「槍」が基本装備としてあった。

中にはヘルメットなども装備していく農民もいただろうが最低限として農民は盾と槍を持って戦場に訪れたのである。

 

これは、現代の感覚としてかなり軽装とされるものの、バカにできない。

なぜならば当時としては、現代人がよく想像する中世の鎧ことフルプレートアーマーはなく、簡易な革鎧すら非常に高価なものであるとされたからである。

 

では、そんな中世ヨーロッパにおいて、どのような鎧があったのか?

また、それらの鎧の防御力や維持費、制作期間などのコスト面に至るまでどのようなものだったのかを解説する。

 

なお、当記事では基本的に中世西ヨーロッパ(イギリスを主とする)を中心に話していくので考慮していただきたい。

他のヨーロッパ地域では同じ年代だったとしても当記事で話していることが違うかもしれないので、その場合はご勘弁を。

 

中世ヨーロッパの鎧とは?

基本的に中世ヨーロッパの鎧は、初期の時代から後の時代まで大きく変化する。

特段、ここでは中世初期の鎧を紹介する。

というのも、中世中期〜後期に至るまで、中世の鎧ことフルプレートアーマーが徐々に姿を現したため、だいたい想像がつくからである。

 

さて、中世初期の鎧は主に3つ。

 

クロスアーマー / キャンべゾン 主に布製の鎧で厚手の服と想像してもらったらOK。
基本的に殴られる・蹴られる・押し倒される際の衝撃を吸収することを中心に守ることを目指した鎧。
革鎧(レザーアーマー) 名前の通り、動物の皮で作られた鎧。軽くて丈夫と万能感があるものの、斬撃への耐性に不安もあった。
鎖帷子(チェインメイル) 金属製の鎖で形作られた鎧。中世初期においてポピュラーな上、斬撃への耐性はほぼ最強格。とはいえ、非常に高価なものだった。

 

主にこの3つが大まかにであるが存在した。

そして、基本的に

クロスアーマー/キャンべゾン > 革鎧 > 鎖帷子(チェインメイル)

の順に強度と価値(製造コスト・資産価値含めて)は高かった。

 

上記でも述べたように農民兵は盾と槍は装備したものの鎧はあまり着なかった。

高峰 遼一
高峰 遼一
正確には着たくても切れなかったが正しいね。

この理由として、鎧は作るのにも時間とお金が非常にかかるものであったから。

 

そもそも戦争で領主に徴兵される農民というのは自由農民いわば”資産をもつ農民”であった。

そんな農民たちは農具に使う道具から槍や木の盾を作ることでどうにか調達することはできたものの、鎧は高すぎて買えないことはザラにあった。

 

そしてそれは布製の鎧のような衝撃吸収がメインであるクロスアーマー / キャンべゾンも例外ではなかった。

どうなのッ!? 布製だから結構安そうだけど…
アイリ
アイリ
高峰 遼一
高峰 遼一
現代人としてはかなり意外かもしれないけど、当時としてはクロスアーマーなどはめちゃくちゃ高い。

 

鎖帷子の鎧についてはこちらで解説しているので見てみてほしい。

 

クロスアーマー / キャンべゾンの価値・性能・防御力

布製のクロスアーマー / キャンべゾンが高かった理由としては、制作にかかる時間と素材が原因だった。

 

そもそもミシンなどなかった時代に服を作るというのは、裁縫の手作業で作るしかなった。

その中でも綺麗に服としての統一感(服全体の左右対称や裾の長さ、ネックの広さや動いた時の可動域含めての統一感)を出すことができたのは、職人のみ。

 

さらに、鎧という特殊な服装に限った話で言えば職人の中でも一部だけが作れるものであったのは、簡単に想像がつく。

加えて、クロスアーマー / キャンべゾンはその防御力がほぼ打撃系にしか強くない。

つまり、剣による斬撃、槍による刺突、矢による攻撃などに対してはほぼ無力だったのである。

 

クロスアーマー / キャンべゾンの主な素材と特徴

そんな、クロスアーマー / キャンべゾンの主な素材はウール(羊毛)だった。

また、麻布(リネン)も使われることもあった。

 

ウールが好まれたのは比較的容易に入手しやすかったことと保湿性に優れていたためである。(夏は涼しく、冬は暖かい素材)

とはいえ、ウールは高級品であったので、ウール100%の鎧は貴族の中でも財力のある者だけが作ることができた。

 

そのため、一部では詰め物として布きれや馬の毛なども使われた。

特段、衝撃を吸収し殴られる痛みや蹴られる痛み、押し倒された時の衝撃を和らいでくれたらそれで良かったので、ウールでなくても良かったというのもある。

 

クロスアーマー / キャンべゾンの1着の制作時間とコスト・手入れ

では、クロスアーマー / キャンべゾンは1着あたり、どのくらいの時間がかったのか?

職人が手がけるとはいえ、クロスアーマー / キャンべゾン一から作るのは時間がかかった。

大体3〜5日のフルタイム(約25時間〜45時間)はかかった。

 

さらに、分業体制ではなかったので、終始1人の職人がコツコツと裁縫し、依頼者に合うように生産していた。

手入れは100%ウール素材であればほとんどなかった。

これは、消臭・消菌効果がウールにはあったためである。

とはいえ、虫食いのリスクは非常にあったため、保管は大事だったし、必要に応じて修理に出すこともあった。

 

しかし、別の布切れや馬の毛などの場合はどうではなかったので、買い替えなども発生したがそう簡単ではなかった。

 

革鎧 / レザーアーマーの価値・性能・防御力

革鎧は、クロスアーマーなどと比較して防御力は向上した。

また、金属製の鎧と比較して軽量だったため、弓兵が好んで利用した。

高峰 遼一
高峰 遼一
また、弓兵に対して王が革鎧を着るようにと法律で定めたりもした。

これは、最低限の防御力と近づかれたら終わりの弓兵としては非常に理にかなった鎧でもあったからである。

 

そんな革鎧の性能としては、2つのタイプが存在する。

1つはなめし皮を単純に重ねて利用したもの。このタイプの多くは『ソフトレザーアーマー』と呼ばれた。

このなめし皮のタイプではあまり防御力は期待できず、軽い剣やナイフでの切り傷を防ぐ程度の防御力しかなかった。

それ以上の攻撃に対しては、鎧としての防御を期待できなかった。

 

対して、厚い皮を蝋やオイルなどのワックスで煮込んで硬化処理した革鎧はその点問題はなかった。

この蝋などで煮込んで硬化処理した革鎧は『ハードレザーアーマー』と呼ばれ、軽量ながら打撃や斬撃に対する防御力が比較的高かった。

そのため、多少なりとも兵達を守ることができた。

ただし、革の持つ柔軟性を犠牲に強度を増しているので、鎧を着た状態での動きにくさはあった。

 

また、革鎧は金属製の鎧と比較して、安価で音を立てない隠密性があった。

これは、軽装備で襲撃する必要の多かった中世ヨーロッパの盗賊からして欠かせない性能である。

 

革鎧 / レザーアーマーの主な素材と特徴

素材 メリット デメリット 総評
・最も防御力が高く、革の繊維が密で厚みがあるため、切断・打撃・刺突への耐性が高い。
・加工後も堅牢で、革鎧の素材として主流。
・比較的入手しやすく、安定供給できる家畜由来の素材。
・煮沸硬化(ボイルドレザー)との相性も抜群で、板金代替としても使用可能。
・重い
・加工が硬く、柔軟性に欠ける。
・通気性が悪く、夏は蒸れるしかびやすい
防御力と安定性を重視するならば最強。
騎士見習いや兵士がよく使った標準素材
ヒツジ ・柔らかく、動きやさ・着心地が最高。
・加工しやすく、服地兼防具の中間素材として優秀。
・防音性・防寒性が高く、冬季戦などに向く。
・薄くて耐久性が低い。切断や刺突にほぼ無力
・湿気に弱く、雨天では防御力が著しく低下。
・伸びやすく、形が崩れやすい。
民兵や軽装兵、弓兵などが使用。
「防具」より「衣服」に近い用途。
ヤギ ・牛革より軽く、羊革より強いバランス型素材。
・繊維が緻密で裂けや摩耗に強い。
・水にある程度強く、湿地や雨でも使いやすい。
・加工もしやすく、軽装鎧や手袋にも多用。
・厚みが足りないため、重装甲としては不十分。
・煮沸硬化での防御強化には限界がある。
機動性・防御力・コストのバランスがよく、スカウト・弓兵・軽騎兵の革鎧に最適。
ブタ ・丈夫で通気性が良く、汗をかいても蒸れにくい。
・摩耗・引き裂きに強く、長持ち。
・小型家畜ゆえに量産が容易で安価。
・表面に特徴的な毛穴があり、仕上げにムラが出やすい。
・見た目が荒く、高級感がない。
・厚みが不均一で強度にばらつきがある。
防御力は中程度。
民兵・下級兵士の「量産型レザーアーマー」に多用。
・繊維が非常に密で、刺突耐性・硬度が高い。
・煮沸硬化で板状にすると、金属板に近い防御力。
・経年劣化で艶が出るため、高級鎧の素材としても人気。
・加工が難しく、柔軟性が乏しい。
・乾燥すると割れやすく、メンテナンスが必須。
・入手が限定的。(馬は高価で家畜としても貴重)
エリート兵・騎士・司令官クラスの高級素材。
まさに「重装騎兵用の革」と言える。
鹿 ・驚くほど柔らかく、動きやすくて静音性も高い。
・湿気に強く、濡れても柔軟性を失わない。
・防寒性があり、森林・山岳戦向け
・切断や刺突への耐性が低い。
・摩耗にも弱く、実戦用より偵察・狩猟用。
・大型個体でないと十分な面積が取れない。
狩人・斥候・軽装兵などが愛用。
「静かに動く」ことを重視した特殊任務向け。

 

革鎧 / レザーアーマーの1着の制作時間とコスト・手入れ

革鎧は比較的簡単に製作できた。

 

それこそ動物の皮を革として利用できてからは、比較的簡単に加工して製作できた。

それもベテランの職人が1人で1着あたり1週間程度で制作できた。

(ただし、加工済みの素材から実際に鎧としての成形を行い実用化するまで)

 

しかし、革鎧はそれでも高かった。

そもそも利用する動物の皮というのが、基本的に牛の皮なので、牛そのものを殺す必要があった。

当時では牛は貴重で、そう易々と殺しては生み出すことはできなかった。

 

現代ですら牛肉が他の豚や鶏と比較して高いとされるのであれば、物が不足気味な中世ヨーロッパではどれほど貴重だったのか?

想像してみれば容易い。

 

そのため、革鎧は加工は難しくなくてもその価値は高かかった

実際、中世ヨーロッパの年収の考え方として牛何頭分なのかで計算していたぐらいである。

 

また、なめす作業には牛の皮で大体2〜3週間はかかった。

つまり、牛を屠殺して解体。

皮を剥いでから以下の工程を行う。

工程 内容 期間
脱毛・脱脂 石灰水・灰汁につけて不要な毛・脂肪を除去 約3〜5日
浸漬(ピクリング) 酸性の溶液に浸けて繊維を開かせ、タンニンを浸透しやすくさせる。 約3〜5日
なめし(タンニン槽) 樹皮や実から抽出したタンニン液に段階的に浸す。(濃度を徐々に上げていく。) 約10〜14日
乾燥・仕上げ 水分を抜き、伸ばしてオイルを塗布。(この段階で煮沸硬化【ボイルドレザー】を行う。) 約3〜5日

これらで合計約20〜28日(2〜3週間)はかかる。

仕上げからは職人であれば1週間で制作できるというのに、下準備に結構時間がかかるんだね!
アイリ
アイリ

 

さらに、中世のなめし職人は複数の皮を同時に処理していたこともあり、なめし槽には濃度の異なるタンニン液が数段階あった。

この濃度の異なるタンニン槽は、数日〜1週間ごとに差し替えられた。

また、気温と湿度によっても乾燥期間は異なり、比較的乾燥させにくい冬の間は乾燥工程だけでも1ヶ月かかることも珍しくなかった。

そのため、上の工程で約2〜3週間かかるとされるのはあくまでも”温暖期の標準”であり、条件が悪くなると伸びることもあった。

 

煮沸硬化に関しては、現在の考古学研究において「なめし後の半乾燥した状態」で行う。

その理由として、鎧としての防御力と寿命のバランスが良いためである。

 

仕上げには裁縫のように鎧として使えるように、パーツを組み合わせていく。

蜜蝋やオイルを塗布することで、防水や防腐処理も行っていた。

 

【季節別】クロスアーマー / キャンべゾン・革鎧がもたらした弊害

季節ごとに好まれた鎧はもちろんあった。

いかに防御力が高い鎧を持つとはいえ、常に使えるものではなかった。

 

以下は季節別に好まれたであろう鎧を紹介する。

【春】どんな鎧も好まれた季節!されど平和時には快適性重視!

冬が明けた春は、温暖で比較的快適に過ごせた季節である。

そのため、戦争があるかないかで好まれる鎧は変わった。

 

貴族でも視察程度ならば、軽装で巡回した。

ただ、盗賊の被害があるとされる場所では一定の鎧を着込むこともあった。

 

さらに、冬前からの戦争が続いていたのであれば備えとして重装備としての鎖帷子を持ち出す貴族もいた。

 

【夏】熱中症と闘いながら戦争に備えられる革鎧 / レザーアーマーを選ぶ季節!

知っての通り、夏はどこだって暑い。

特に野戦として炎天下での戦闘をする場合、熱がこもりやすい鎧などは非常に苦しいものだった。

 

例えば炎天下の中、戦闘をする場合、革鎧は非常に蒸れた。

 

人によっては汗疹などで、身体中が痒くなり、戦闘に集中できない者もいただろう。

これは革鎧の性質上、通気性が悪いため非常に不快感のある鎧だったためである。

 

しかし、炎天下の中でも熱中症にならず、ある程度の強い防御力を確保できたのは他ならぬ革鎧だった。

 

【秋】戦争が主だった季節!何より重視は生き残るための防御力!

秋になると戦争の季節と言わんばかりに、あちこちで戦闘が繰り広げられた。

この理由としては、小麦が実り収穫できるようになるので、現地調達が基本の中世の軍では攻めるには都合の良い季節であったからだ。

 

そんな季節で求められたのは防御力。

すなわち戦闘で生き残るための力である。

 

よって、秋になって防御力の高い鎖帷子が本領を発揮した。

季節的にも暑すぎず、寒すぎないこの季節では、鎧はいかに防御力を持つかで戦闘を生き残れるかが決まった。

 

無論、貴族によっては革鎧で戦うこともあったし、クロスアーマー / キャンべゾンを見に纏うこともあった。

ここは貴族の財力に応じて変化したが、どの貴族も生存率の高い防御力のある鎧を好んだ。

 

【冬】防御力より暖かさ重視のクロスアーマー / キャンべゾンが好まれた!

冬になると、流石に例外を除いてどんな戦争も自然休戦する。

これには、冬の間の戦争コストが比較的上がるためだった。

 

現代とは違い、暖房が基本的にない中世では家の外も家の中も常に寒かった。

せいぜい、暖炉の前や焚き火の前だけが暖かかった。

 

そんなものだからか、温かいクロスアーマー / キャンべゾン・革鎧などが求められた。

中には革鎧もあったが、革鎧によっては熱を維持するものはなかったので基本的にはクロスアーマー / キャンべゾンが好まれた。

 

無論、財力のある人は併用して備えていたこともある。

とはいえ、戦闘リスクがほぼない冬場では快適性の高い服装が主流であったのは間違いない。

 

【地形別】クロスアーマー / キャンべゾン・革鎧がもたらした弊害

戦場で重要なのは地形とされるように、鎧ごとにも地形に適したものがあった。

特段、水辺はどの鎧も不利であったのは理解できるが、水辺以外でも地形としてどのような影響が鎧によって引き起こされたのかを紹介する。

 

平野・丘陵でのクロスアーマー/キャンべゾン・革鎧の弊害

平野や丘陵では、鎧の弊害はさほどなかった。

もちろん、クロスアーマーより金属製の鎖帷子の方が疲れやすいなどの弊害はあったものの、基本的に地形による弊害差はなかった。

 

むしろ、季節的にどうだったかによって鎧の弊害が出た。

例えば、革鎧などは夏場には蒸れやすかった。これは平野では日光を遮るものがなかったためである。

 

森でのクロスアーマー/キャンべゾン・革鎧の弊害

森では、どのようなスタイルで戦争するかで少し異なった。

例えば、奇襲や強襲などといった場合にはクロスアーマー / キャンべゾン・革鎧は抜群の効果を出した!

 

これは、クロスアーマー / キャンべゾンや革鎧が、動作によって音が出なかったことからである。

遮蔽物の多い森で、奇襲や強襲といった奇策をする際には相手の隙を狙う必要があるために、隠密性の高い鎧は非常に好まれた。

事実、ゲリラ戦などを展開することの多かった地域では隠密性の高い鎧を着用したりもした。

高峰 遼一
高峰 遼一
ただ、ゲリラ戦術をする時点で国力的に負けていることも多かったので、実は鎖帷子などのような金属製の鎧を買う購買力がなかったのも一つの要因と考えられる。

 

山岳でのクロスアーマー/キャンべゾン・革鎧の弊害

山岳でも森同様にクロスアーマー / キャンべゾン・革鎧は好まれた。

理由としては、(山岳の標高にもよるものの)比較的高く寒い山岳では比較的体温を維持できるクロスアーマー / キャンべゾン・革鎧は戦闘継続能力が高いとして認められていたから。

 

また、比較的標高のあまり高くはない山岳でもクロスアーマー / キャンべゾン・革鎧は非常に役立った。

というのも、クロスアーマー / キャンべゾン・革鎧は軽く丈夫であるために、山岳地帯を行き交うには十分すぎるほどのスペックがあったためである。

 

海・川でのクロスアーマー/キャンべゾン・革鎧の弊害

海や川といった地形は革鎧にとっては最悪の地形だった。

そもそも鎧は防御力に比例して固く重くが原則のため、前提として泳ぐことを想定していなかった。

そのため、一度海や川などに落ちた場合、いかに水泳が得意な者でも溺れて亡くなることは平然とあった。

 

これは、泳ぎの問題ではなく、鎧の性質であった。

例えば、革鎧は防水処理したとはいえ、水を吸うと非常に重くなる。

そのため、川などに落ちた場合、即座に脱ぎ捨てなければならないほど危険が高いものだった。

 

ギリギリ行けた可能性があるのはクロスアーマー / キャンべゾンなどである。

とはいえ、水泳が得意な人が粗末なクロスアーマー / キャンべゾンなどを身に纏って、ようやく100メートルと離れていない対岸の川を泳いで渡ることができるほどのものだった。

 

よって、川向こうに敵がいる場合、必ず橋を渡る必要があったのはまさにこの部分で川を兵士が超えることがほぼ不可能であったからである。

 

【例外】湿地帯でのクロスアーマー/キャンべゾン・革鎧の弊害

ちなみに、湿地帯では原則戦闘はしなかった。

と言うのも、湿地帯は鎧を着た者にとって地獄であったからである。

 

まず、湿地帯の足場は非常に不安定で転びやすいほか足を取られるので、機動性がほぼ失われた。

 

これはどの鎧でもそうだった。

その上で、湿地帯には水が豊富にあったので、足元を掬われ、転けた先が水であれば、もはや自力では立ち上がれないほど危険な場所だった。

 

よって、敵軍が湿地帯に逃げた場合、追撃はせずに放置した。

逃げたとしても、長生きできないだろうということだったのね!
アイリ
アイリ

これは鎧が兵士の命を脅かす大きなデメリットになるためだった。

とはいえ、軽装のクロスアーマー程度であれば、多少闘うことはできたのでリスクを覚悟に、湿地帯へ相手連れ込んで軽装の自分たちで始末することは戦略上存在した。

 

鎧としてのクロスアーマー / キャンべゾン・革鎧の装備 まとめ

基本的に「槍」と「盾」で防具は持たないことが多かった自由農民の中で、鎧を持つことは大きなアドバンテージだった。

 

そして、クロスアーマー / キャンべゾンのような布の鎧も、やはり戦場では役に立った。

領主からしてみても、ある程度の装備を持って徴兵に応じるもしくは参加させられる自由農民兵は非常に価値があった。

 

これは、軍としての強さに関わるため、装備の充実度が高いのは非常に好まれた。

一方、反乱の抵抗力となることもあったので懸念した領主もいた。

 

そんなクロスアーマー / キャンべゾンは、制作に時間がかかった。

これは革鎧も同じであった。

 

革鎧は1着あたり、約20〜28日(2〜3週間)は制作にかかった。

また、この日数もあくまでも温暖期の標準的なものであったため、時期によってはさらに伸びることもあった。

 

布の生産にかかる人件費と動物の皮を得る材料費。

これらによって、中世ヨーロッパ(特に西ヨーロッパ)ではクロスアーマー / キャンべゾン・革鎧は非常に高かった。

 


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