Contents
記事からわかること
- 爵位制度の成立過程
- 爵位の位と種類
爵位制度の始まり
ヨーロッパにおける爵位制度の始まりは全て、元々土地を支配または管理していた官職が中世になるにつれて、地方分権化の過程で世襲されたものだ。
故に、爵位には元ローマ帝国の官職に由来するものもあれば、時代とともに新たに作られたものもある。
しかし、その歴史は全て(後世に造られたものであっても)元ローマ帝国の官職が由来となっており、ローマ帝国という国家が消滅したことに加えて、各地の王の権力が弱まったことで発生した地方分権化によって成立してきたものが多い。
また、爵位は家系に対して与えられたものではなく、領地に対して与えられている。
そのため、父から子へ継承する際には爵位を継承するわけではなく、その爵位が持つ土地を継承することを意味する。
ちなみに、王族の中には爵位が必ずしも王ではなく、大公や公爵といった爵位で王になっているところもある。
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中世ヨーロッパの王制と王の役割
爵位の位と種類
中世の時代からヨーロッパでは大小の差はあれど多くの貴族が存在した。
その位の高さは上から順に高く、それだけ巨大な権力基盤を有していることを示す。
① 大公 ー Grand Duke グランドデューク ー
一応、公爵の上に存在する称号だが、一部の特に東欧に多い称号。意味合いとしては公爵を束ねるという意味を持つ。
ただ、権力は公爵と同じであるために両者の違いは特段ない。
後の時代に王族となることが多い。
② 公爵 ー Duke デューク ー
元は、古代ローマの有力者に与えられる称号であり地方司令官を指す言葉であったが、帝政後期には、異民族の首長に対して与えられるようなったことから成立した爵位。
これを受け、フランク人はこの爵位を将軍に用いるようになり、ついにはフランク王国を成立させたシャルルマーニュ(カール大帝)が平定した辺境の諸氏族に与え、宗主権を認めさせたことで、『公爵』は軍の司令官であり、郡の執政を持つようになった。
加えて、この称号は世襲され、公爵領となり王子などにも用いられる習慣も広がった。
最終的にこの称号や習慣はフランク王国以外の地域にも広がり、イングランドではエドワード黒太子が初の公爵(コーンウォール公)になった。
③ 王子 ー Prince プリンス ー
王族の長男などの男性家系やその他、国の後継者として連れてこられた養子などに与えられる称号。
その責任は王の次に重く、王の死後に国を統制できるのかを常に民や貴族、豪族たちなどに証明し続ける必要がある。
また、国内の国民に勇気を与える存在である。
対して、女系の姫に与えられる役割は国民への安らぎであるために、政略結婚などに利用されることが多かった。
④ 侯爵 ー Marquess マークィスー
辺境伯とも訳される爵位であり、その成立はカロリング朝フランクで国境(辺境)を守る武将の役職名が由来である。
時代とともに、貴族の一称号となっていき公爵の下、伯爵の上といった感じで序列が作られ、ヨーロッパ各地で導入され、13世紀から14世紀には一般的に定着した。
⑤ 伯爵 ー Earl アールー
9世紀、スカンジナビアのデーン人が非王族軍指揮官として任命した役職名が由来である。
また、ローマ帝国の廷臣の階級であったCountとも呼ばれる。
Earlとしては、デーン人がイングランドに移住してからも称号を用い、各州に配置された州自体の統治が任務とされた。
当初は一代限りの役職だったが、すぐに貴族の称号として用いられるようになり、ヨーロッパ各地に広がった。
Countとしては、ローマ帝国の地方司令官が直属の部下として指名したことが由来である。
当初は任命制だったが、次第に世襲制へと変化し、中世には伯爵領が登場した。
この伯爵領は現在の州「カウンティ」という形で受け継がれている。
領主としての伯爵の地位は近世以降、称号化し社会の序列を表す名称へと変化していった。
⑥ 子爵 ー Viscount ヴィカウントー
「副伯」という意味でフランスやスペインでは使用されていた。
また、ドイツの城伯、都市伯に相当する爵位とされた。
⑦ 男爵 ー Baron バロンー
自由民を表す言葉から領主一般を指す言葉へと変化し、最終的に子爵以下の爵位を持たない領主の爵位となった。
また、スコットランドでは、荘園を意味しており、荘園領主・小規模領主という意味で使用された。
⑧ 準男爵 ー Baronet バロネットー
17世紀、イングランド王のジェームズ1世がアイルランド征服および開拓のための資金を集めるために新しく創設した称号で、兵士30人を3年間養える費用(1,095ポンド)を献納した地主に与えられた。
また、準男爵は世襲称号の中でも最下位で、貴族ではなく平民の称号とされた。
男性はSir(サー)であり、女性はDame(デイム)と呼ばれる。
⑨ 騎士爵 ー Knight ナイト ー
ナイトは中世の騎士階級に由来した称号で、主に文化・学術・芸能・スポーツ面で著しい功績があった者に与えられる称号。
ただ、ナイトの称号は一代限りで世襲することできない。
まとめ
現代に残る貴族の爵位は時代とともに減少し、今なお残る爵位も昔のような強大な権力を有することはほぼなく、むしろ名称だけの形骸化している。
しかし、それでも一部の貴族たちは保有資産を有効活用しその富を膨らませては政治や経済に大きく影響を与える存在となっている。
そのため、今なお貴族制は事実上存在するとも言えるし、身分制度の撤廃によって形式上はないとも言える。