Contents
この記事からわかること
- 中世ヨーロッパにおける攻城兵器の種類
- 都市攻略に使う攻城兵器の戦略
中世ヨーロッパにおける攻城兵器とは?
中世ヨーロッパにおいて攻城戦はどのように行われていたのか?
もし、仮に自分が攻める側となり攻略するのであれば、目の前に立ちはだかる高い城壁をどのような戦法で攻略するのか?
小説や漫画にあるような魔法で一気に城壁を崩すのか、もしくは圧倒的な兵力で一気呵成に突撃して力技で攻略するのか。
また、敵方の一部を裏切らせて城壁の門を開けてもらうのも面白いかもしれない。
しかし、現実ではそう簡単には行かない。
そこで、今回は中世ヨーロッパにおいて都市攻略の鍵となった攻城兵器の数々とその戦術を紹介する。
中世ヨーロッパの攻城兵器① 投石機(カタパルト、トレビュシェット)
攻城兵器といえば、まず誰もが最初に連想するであろう投石機。
投石器は、城壁が高くて近づきにくかったり、城内の守備隊が強力な弓兵を持っていたりする場合に有用な兵器だ。
特に、城壁を壊すのに効果的で、城壁の守備隊に対してダメージを与えることができた。
安全なところから一方的に敵に対して攻撃することが可能な攻城兵器は、戦場において非常に貴重である反面、移動もしくは制作するのには時間がかかった。
そのため、防衛側の兵士たちは侵略軍が投石機の制作準備をしていることが判明すると即座に妨害行為と未完成な投石機の破壊を行なった。
また、投石機には様々な種類が存在し、種類ごとにメリットデメリットが存在した。
例えば、移動可能な小型の投石機「カタパルト」
最大140キログラムの石を最大で300メートル先に飛ばすことが可能だった巨大な投石機「トレビュシェット」
などがあり、それぞれ利用用途によって用意する投石機が決まった。
中世ヨーロッパの攻城兵器② 破城槌
投石機に次に有名なのは、おそらくこの破城槌だろう。
破城槌の歴史は他のどの攻城兵器よりも古く、最古の攻城兵器と言っても問題ないだろう。
その構造はシンプルで、槌となる一本の丸太もしくは棒状のモノを用意するだけで破城槌は完成する。
しかし、そのような破城槌は防衛側からすぐに使えなくされるので、基本的には屋根と車輪をつけた小屋のような見た目をした破城槌を作ることが多い。
この小屋のような破城槌は防御力に優れており、城門に集中する守備隊による射撃などの守備をほとんど無効化しながら城門へ辿り着き、こじ開ける事が可能だった。
また、城壁を打撃で壊すのにも役立った。
そんな破城槌は、防御力と攻撃力に優れている反面、移動は遅く、方向転換が難しいなどの課題もあった。
そのため、城門が一直線で狙える場所があれば、破城槌は有効な攻城兵器だがクネクネと曲がりながら城門を目指すしかない城などにはあまり効果が見込めない兵器だった。
中世ヨーロッパの攻城兵器③ 攻城塔
投石機、破城槌と続いて攻城兵器と聞けば、攻城塔を思い出す人もいるのではないだろうか。
攻城塔は読んで字の如く。
城壁への接近と乗り越えを支援する攻城兵器であり、城壁を突破するのには最適とも言える方法である。
基本的に攻城塔はいくつも同時的に城壁へ近づき、侵略軍の兵士が城壁を乗り越えるための橋を備えているため、城壁が高くて急斜面であったり、城内の守備隊が堅固に守っている場所で非常に有用な兵器である!
侵略軍の兵士を守りながら、侵攻兵力を城壁へ着実に送り届けられる輸送力は戦場において圧倒的な効果を発揮する!
しかし、この世に万能の兵器は存在しない。
この攻城塔は、基本的に城壁と同じかちょっと高いくらいの大きさまで制作するため、攻城兵器の中では完成するまで一番時間がかかってしまう兵器でもある。
また、攻城塔は制作時間のみならず、その巨体さ故に限られた場所でしか使えない兵器でもあった。
少なくとも攻城塔は硬く乾いた大地の上のみしか動かせない兵器であるため、雨などが降ると地面がぬかるんでしまい、すぐに使えなくなってしまう欠点もあったため、攻城塔を使う際には周囲の地形や天候にもきを配らないといけない兵器だった。
中世ヨーロッパの攻城兵器④ ハシゴ
投石機、破城槌、攻城塔とは異なり、非常に手頃かつ安価な攻城兵器といえばハシゴだろう。
一見して、攻城兵器とは思えないが、実際に攻城戦の際に最も使われた兵器と言っていいのはこのハシゴだろう。
構造もシンプルで機能性も抜群。
まして、他の攻城兵器と比べて、非常に安価かつ制作するのには時間がかからない。
このハシゴは攻城戦において非常に有用な兵器だ。
攻城戦では主にハシゴを利用して城壁を登り、城内へと侵入するシンプルなものだが、城壁上にて防衛する兵力に対して、侵略軍が兵力を一気に展開できるというメリットを持つのは大きい。
しかし、防御面では最悪と言えるだろう。
ハシゴを上には両手両足を使わないといけないため、登っている最中は完全に無防備となる。
そのため、ハシゴを登っている最中にやられてしまい、ハシゴの途中から落下して死亡なんてことはよくあるモノだった。
故に、侵略軍はハシゴを登る味方を城壁上にいる守備隊から十分に援護しなければならない。
中世ヨーロッパの攻城兵器⑤ バリスタ
バリスタは、古代の頃から使われている攻城兵器だ。
バリスタは、中世のクロスボウに似た大型の射撃兵器で、有名なのはおそらく、古代ローマのバリスタだろう。
兵器としての大きさ、威力、手軽さは抜群であり、攻城塔の中に仕込んで敵を攻撃するなんてことも可能な兵器だ。
だが、そんなバリスタには大きめのモノから小さめのものまで様々な種類がある。
特に攻城用で使われるバリスタは中型から大型が多かった。
そんなバリスタは、遠距離からの狙撃に優れており、侵略軍による城壁上の敵兵の排除や城壁の守備隊による侵攻軍の排除にも効果的だ。
特にバリスタは敵の射手や弓兵を撃退するのに効果的で、攻城戦では城壁への接近や攻撃を容易にするのに役立った。
また、移動させやすく、命中性の高いバリスタは攻城戦において非常に効果的だった。
しかし、メンテナンスのために常にある程度のコストが掛かったため維持するのは難しい兵器でもあった。
まとめ
中世ヨーロッパの攻城兵器は、投石機に破城槌、攻城塔、バリスタなど多数存在し、中世の攻城戦において重要な役割を果たした。
最後に、今回紹介した内容を表にまとめると以下のようになる。
攻城兵器 | メリット | デメリット | 戦略 | 総合評価 |
投石器 (トレビュシェット) |
・遠距離からの攻撃に優れている
・城壁攻撃時に燃える弾を使って城内を炎上させる |
・大型で運搬・設置が困難なため、敵から反撃・妨害を受けるリスクがある
・高コストで製造・運用に多くの人員と時間を要する場合がある |
・城壁を壊すことで城内の守備隊にダメージを与える
・敵の城が高い城壁で守られている場合に有用 |
・高威力の攻撃が可能で城壁を破壊するのに効果的な兵器 |
破城槌 | ・城門や城壁の破壊に特化している
・城門が要塞の主要な出入り口である場合に有用 |
・移動が困難で時間と人員のコストがかかる場合がある
・城門攻撃は敵の注意を引き、攻撃側が集中的な反撃を受けることがある |
・攻城戦の際に城門を破壊して城内に侵入することを目指す
・城門の堅固な防御を打ち破るために使用 |
・城門の破壊に効果的で、侵入経路を確保する有力な兵器 |
攻城塔 | ・城壁への接近と乗り越えを支援する
・攻撃側の兵士が城壁上に展開し、城内の守備隊と直接戦闘が可能 |
・大型で移動に時間と手間がかかる
・攻城塔の移動中は攻撃側の兵士が無防備になることがある |
・攻城塔を配置して城壁に近づき、攻撃側の兵士が城壁を乗り越える
・城内の守備隊と直接戦闘を行うことができる |
・城壁への近距離攻撃や兵士の展開が容易で、城内へのサポートをする
・大型で移動が困難な上、敵の攻撃対象となりやすい兵器 |
ハシゴ | ・簡便な城壁乗り越えに利用できる
・攻撃側の兵力が限られている場合に有用 |
・城壁上での敵の攻撃に対して脆弱な位置にいる
・攻撃側が城壁に登り切るまでに時間がかかる |
・城壁が高くて急斜面の場所でも有用
・他の攻城兵器と組み合わせて使うことで有効性を高めることができる |
・簡易な兵器であり、少人数での使用が可能
・城壁上での防御が脆弱であり、敵の攻撃対象となりやすい |
バリスタ | ・遠距離からの狙撃に優れている
・敵の射手や弓兵を撃退することができる |
・装填に時間がかかるため連射力が低い
・照準が難しいことがある |
・城壁上の敵兵の排除や城壁の守備隊に対して有用
・城壁攻撃時に優位性をもつ |
・遠距離からの高い威力で攻撃が可能で、射手の支援に適した兵器 |
攻城戦は敵の城や要塞を攻略するための厳しい戦闘であり、これらの兵器は侵攻側に一定の優位性をもたらした。
その中でどのような兵器をどこで使い、都市攻略を進めていくのかが中世ヨーロッパの攻城戦にとって重要なポイントだった。
都市攻略において最小限の犠牲と労力で最大限の成果を得るには、攻城兵器が持つそれぞれの特徴を捉えた上で実現可能な戦略を立てていくしか道はない。
そのため、仮に中世ヨーロッパ風の異世界へ転生して、投石機や破城槌、攻城塔、バリスタを作れたとしても都市が攻略できるかはわからない。